インドネシアの首都であるジャカルタではたびたび洪水の被害に悩まされます。2019年12月31日から新年の1月1日にかけてものすごい雨が降りました。首都ジャカルタはもちろん、その他近郊においても洪水や土砂崩れを引き起こし、甚大な被害を引き起こしました。その洪水では、300以上の村が水没し、死者は60人、90,000人を超える難民が出ました。その翌月の2020年2月25日にも、インドネシアの首都ジャカルタで豪雨により洪水が発生し、数十の地区が冠水などの被害に見舞われました。土地が低いジャカルタでは、11月前後に始まる雨期に洪水が起きやすく、非常に困った問題になっています。
ジャカルタの洪水は決して新しいものではなく、17世紀の初めには、既に洪水が問題として取り上げられるようになっていました。今とほぼ同じように、ジャカルタを流れるチリウン川の氾濫が1つの要因です。2007年には、ジャカルタエリアの60%以上が洪水に見舞われ、水位5メートルに達する地域などもありました。筆者自身もその洪水のため、会社からわずかに離れた自宅に帰ることができず、会社そばのホテルも避難民でいっぱいであったためにオフィスの堅い机の上に寝たという過去があります。洪水の被害は経済に大きな影響を与えてしまいます。ジャカルタの洪水の原因としては、降雨量の多さだけではなく、それ以外にも様々な原因が挙げられ、解決を難しくしています。今回はその要因についていくつか考えてみたいと思います。
地盤沈下

首都ジャカルタはインドネシア最大の都市として人口1,000万人以上を抱え、政治・経済の中心地として急速な発展を遂げています。そのため、住民による地下水の過剰揚水等により、1年に約20cmくらいの速度で地盤が沈下しています。特にジャカルタ北部は地盤沈下が激しく、海抜ゼロメートルになっているところが多々あり、満潮時には海水が侵入する等の被害が起こっています。北部だけではなく、ジャカルタの多くの場所で地盤沈下が見られ、降雨時には浸水被害や湛水被害が年々拡大し、住民への影響が出ています。海面上昇の問題もあるため、このペースで地盤が沈下していくと、2050年までに、ジャカルタの3分の1は水没する可能性があると試算する報告もあります。ジャカルタには川が13本あるのですが、すべての川が汚染されてしまっています。そこで海水を脱塩すればジャカルタへの真水の供給に役立つのですが、そのためのプラントを稼働させるには莫大な費用がかかります。海岸付近には防潮堤も配置し、なんとか被害を食い止めようと努力していますが、ジャカルタの生活用水が不足している現在、住民に水を供給するために地下水を汲み上げる以外の方法を見出せない限りはジャカルタの地盤は沈み続け、防潮堤さえも沈んでしまいます。インドネシアはまだ発展途上国なので、問題は非常に複雑になっています。
ゴミ詰まり

「ゴミ詰まり」が、ジャカルタにおける洪水を引きおこしている原因の一つとなっています。ジャカルタ市は人口が集中していることもあり、毎日大量のごみが出ています。そのゴミが排水路をブロックしてしまうため、深刻な洪水を引き起こす原因となっています。2013年に行われた住民へのアンケート調査結果によると、ジャカルタ市の洪水の主要因はゴミであると答えた人が全体の約3割になり、第1位の理由として挙げられています。また、その時のアンケート対象者の多くの人々が、ゴミ収集所の立地の問題等からほとんどのゴミを河川に直接投棄していると答えていました。このゴミ問題が今ジャカルタにおける非常に深刻な社会問題となっています。マンガライ水門の写真を見て頂くと、重機でペットボトルや発泡スチロール、ビニール袋、お菓子の包み紙、竹、材木など、大量のごみをすくい上げている様子がうかがえます。道端を歩いていても相変わらずゴミが目立ちますし、走っている車の後部座席の窓が開いたと思ったら、そこから平気で道に向けて食べ終わった後の弁当やペットボトルなどを捨てているのを目撃したことがあります。市民の道徳心から考えないとすぐには解決しない問題です。
ポンプ排水能力の問題
ジャカルタの北部の港に近いプルイット地区には、ジャカルタ市の排水区域の約9割をカバーするポンプ場があります。2013年のジャカルタを襲った洪水では、ポンプ場にある3台のポンプのうちの1台が修理中であったこと、ポンプ場自体も浸水等により全てのポンプが使えなくなってしまったことなどがあり、下流地域(沿岸部)では洪水による氾濫状態が約1週間継続する事態となりました。現在JICAが協力していますが、ポンプ排水場は雨水や余計な氾濫水を排出するためには欠かすことができない大事な施設なので、今後はしっかりとした修理・保守、外部電源の浸水対策などはもちろん、新しいポンプ場の建設が必須となります。
まとめ
こうしてみていくと、酷い洪水を引き起こさないようにするためには、人間の生活を見直す必要が大いにあります。ジャカルタは今も次々と住宅地や高層ビルが建設されていて、土ではなく、コンクリートやアスファルトで地面が固められて行っています。緑が奪われた結果、雨水がストレートに川に流れ込み、洪水を引き起こしているという事実もあります。いろいろの要因があり、事態は複雑ですが、みんなで協力することで被害を縮小することができると思います。



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