パンチャシラ(Pancasila)

パンチャシラとは、1945年の独立に際し、初代スカルノ大統領が1945年6月1日の独立準備調査会の席で発表した五原則が現在の「パンチャシラ」の原型です。サンスクリット語でパンチャが「5」、シラが「原則」を表し、一般に建国五原則と呼ばれています。スカルノを含む9人の識者が討議し、1945年6月22日に「ジャカルタ憲章」という形にまとめられ、独立宣言直後の8月18日に「パンチャシラ」建国五原則として定めらました。

「パンチャシラ」建国五原則は以下の通りです。

  1. 唯一神への信仰(Ketuhanan Yang Maha Esa)
  2. 公正で文化的な人道主義 (Kemanusiaan Yang Adil dan Beradab)
  3. インドネシアの統一(Persatuan Indonesia)
  4. 合議制と代議制において英知に導かれた民主主義 (Kerakyatan Yang Dipimpin oleh Hikmat Kebijaksanaan, Dalam Permusyawaratan / Perwakilan)
  5. 全国民に対する社会的公正(Keadilan Sosial bagi seluruh Rakyat Indonesia)

国章「ガルーダ・パンチャシラ」は、神鳥ガルーダの胸部にパンチャシラの5原則を表す盾が掲げられています。下図をご参照ください。

1.中央の星:唯一神への信仰 
2.右下の鎖:公正で文化的な人道主義
3.右上のガジュマルの木:インドネシアの統一
4.左上のジャワの野生の雄牛:合議制と代議制において英知に導かれた民主主義
5.左下の米と綿:インドネシア全国民に対する社会的公正
出所:
https://en.wikipedia.org/wiki/National_emblem_of_Indonesia#

パンチャシラを胸に掲げた鷲(ガルーダ)は、「多様性の中の統一」と書かれた表示を両足で掴んでいます。多様性の中の統一を国是とするインドネシアでは、パンチャシラ自体が様々なものを包含する内容となっています。

スハルト政権期のパンチャシラ

1985年にスハルト政権は、すべての社会団体がパンチャシラを受け入れるように法制化し、それに違反する社会団体の活動を禁止する措置をとりました。このため、イスラム団体の中に、イスラム教の上にパンチャシラをおくことはできないと、強く反発するものが出てきました。1998年のスハルト政権崩壊後、抑え込まれていた反体制活動が活発化しました。2000年代に入るとバリ島連続爆破テロなど派手なテロ活動で注目を集めましたが、治安部隊による一斉摘発でほどなく壊滅し、その中から統一目標をもつ大規模な国際テロ組織の影響から離れたローカルな小規模組織が乱立し、警察署やキリスト教会への自爆テロなどを繰り返しているというのが現状です。

パンチャシラの第1項

パンチャシラの中で重視されているのが第1項の「唯一神への信仰」で、これによってインドネシアが敬虔な宗教国家であることが強調されました。ただし、インドネシアの国民の9割はイスラム教徒ですが、イスラム教を国教としているわけではなく、キリスト教のカトリックとプロテスタント、ヒンドゥー教、仏教、儒教は容認されています。したがって、6宗教のどれかを信じることが求められますが、どれを信じるかは個人の自由となっています。ただし、認められているのは、この6つの宗教のみであり、それ以外の土俗的な信仰は宗教と認められていません。国民はこの6つの宗教のいずれかに分類・登録され、国民の祝日にもキリスト教や仏教の祭日も含まれています。インドネシアでは無神論は違法であり、無宗教を公言すると逮捕される場合もあります。第1項が強調されるのは、共産主義思想はインドネシアのパンチャシラ精神に合わないという点で、それがインドネシア共産党の非合法化の理由とされています。 
先程の過激なイスラム団体の出現は、この第1項の「唯一神への信仰」がイスラム以外の宗教を認めたところにあります。

6月1日を祝日と制定

ジョコウィ大統領は2016年6月1日、西ジャワ州バンドンのムルデカ会館で演説し、6月1日を国家5原則パンチャシラを記念する「パンチャシラの日」として国民の祝日と定めると発表しました。世界で最多のムスリム人口を抱えながらもイスラム国家とはせず、多宗教多民族共生の原則として据えたパンチャシラを基に「未来への希望を持とう」と国民に呼びかけました。
 ジョコウィ大統領はその式典で「パンチャシラという国家原則のもと、われわれは未来に対して希望を持つべきだ。国際競争に勝つという自信を持つべきだ」と訴えました。また「建国の父」と呼ばれるスカルノ初代大統領の1945年6月1日の演説を引用して、国際社会の勝者となるための条件として勤勉相互扶助を呼びかけました。

タイトルとURLをコピーしました