インドネシアでビジネスを行う上で注意しなければいけない点の1つに「宗教」が挙げられます。パンチャシラのご紹介の中でも述べておりますが、インドネシアでは宗教の信仰が義務付けられています。国民の身分証明書(KTP)に自身の信仰宗教を記載することが必須となっており、6つの宗教の中から選択しなければなりません。インドネシアの国是であるパンチャシラには、「唯一神への信仰」が掲げられており、インドネシアの人々にとって宗教の存在は非常に大きなものとなっています。インドネシアは人口の約9割がイスラム教徒で、世界最大のイスラム教徒の人口を抱えている国です。インドネシアで生活する上で切っても切れない存在が『宗教』で、ここで生活すると宗教に触れる機会も多く、事前に知っておいたほうが良いことがいくつかあります。ほとんどの日本人はイスラム教についてはなかなかイメージができないことが多いと思います。ここではインドネシア社会におけるイスラム教を2回に分けて皆様にご紹介したいと思います。
イスラム教とは
イスラム教は預言者ムハンマドがメッカで神(アッラー)から啓示を受けて説いた一神教でイスラームとも呼ばれます。現在イスラム教徒の数は約18億人と、いまや世界人口の4人に1人を占めるまでになっています。中東に暮らすムスリムは、実はほんの一部で、世界のムスリムの半数以上は、パキスタン、バングラデシュ、インド、インドネシアなどのアジア地区に住んでいます。中でも最も多いのがムスリムの数が2億人を超えるインドネシアです。日本の人口よりもずっと多いですね(笑)。
イスラムの意味は「神に帰依すること」という意味で、「ムスリム」の意味は「神に帰依する者」という意味です。彼らにとって、信仰の告白、礼拝、喜捨、断食、聖地メッカへの巡礼からなる5つの基本行為、および神の教えで定められた行動規範を守ることは義務とされています。義務と言っても、決して強制的に強いられるものではなく、それは自ら喜んで行なう行為を意味します。日々の行動で信仰を表すことが、キリスト教や仏教など他の宗教との違いになります。その日々の行動の中にはもちろん食事も含まれます。したがって、毎回の食事の際、神の教えで禁じられた食べ物を口にしない行為は、信仰の実践にあたります。また、ムスリムは神の前で等しく平等であるとされています。イスラム教が人種、民族、国家、言語、文化などの境界を越えて受け入れられ、広がっていった背景にはこの平等主義が大きいと言われています。
インドネシアへは13世紀に渡来し、北スマトラに最初のイスラム小王国が成立しました。「海のシルクロード」と呼ばれる海の交易ルートを通じ、アラビア半島からインドを経由して東南アジアに渡ったのだと言われています。
礼拝の習慣
イスラム教徒は、1日に5回(明け方、午前中、午後、日没後、就寝前)メッカの方角に向かって礼拝をします。それは余程のことがない限り、職場でも行います。仕事の途中に居なくなったなあと思っていると、お祈りをしていたからだと気づかされることは日常茶飯事です。職場にも彼らのために礼拝用の場所を定めて、提供してあげる必要があります。また、金曜日には男性のみですが、モスクに訪れて礼拝をする「金曜礼拝」という習慣もあります。工業団地などでは、駐車場の一画にモスクを作ってあげて、礼拝ができるようにしている日系の会社もあります。大きなモールですと、必ず礼拝ができる広いスペースが設けられています。ショッピングセンターなどでは駐車場の一画をムスリムに開放し、そこでムスリムの男性がお祈りをします。金曜礼拝は男性にとっては大事な礼拝になります。それゆえ、お客さんの会社を訪ねる場合は、できれば金曜日は外した方がいいようです。また、金曜日の午後からは、社員のほとんどが帰ってしまっていたり、営業時間が短くなっていたりする会社も多いように思います。できれば金曜日にはアポを入れないようにした方が、無難です。得意先だけではなく、自分の職場においても、礼拝の習慣を理解してあげることは必要です。ムスリムとビジネスをする際には、時間や場所の配慮は忘れてはいけません。
断食月ラマダン
毎年、約1カ月の期間ラマダンといわれる断食月があります。断食明け大祭「イドゥル・フィトリ」までの1ヶ月間はムスリムは日の出から日没まで、飲み物・食べ物などを一切摂りません。煙草ももちろん吸いませんし、つばさえも飲み込まないようにしています。 イスラム教徒たちにとっては、毎年の恒例行事で慣れているとはいえ、インドネシアは赤道直下の国ですので日中はかなり暑くなり、のどの渇きは相当きついものになります。彼らの前での飲食はできれば避けた方がいいですし、彼らの体調を気遣ってあげる必要もあります。ムスリムは、断食を行うことで飢えの辛さを味わい、食事をまともに食べられない人の苦しさを知り、当たりまえのように過ごせている日々のありがたさに感謝します。筆者もイスラム教徒ですので、断食月には1日も欠かすことなく断食を行います。断食明けに飲む水のうまさは言葉では筆舌しがたいものがあります。ラマダン後は、長期休暇になります。首都ジャカルタやバンドンはもちろん、イスラム教徒が働く地域のビジネスは完全に停止します。この期間はお役所も閉じてしまいます。VISAの申請や更新等にも支障が生じますので、この時期にVISA関係の手続き等を行わなければならない場合は、早めに手続きを済ます必要があります。
不浄の手
イスラム教では左手は不浄の手とされています。したがってご飯を食べる時も彼らは極力左手を使わないようにしています。人にものを渡す際や、握手する場合など左手ではなく、右手を使うようにしなければなりません。もし、誤って左手を使ってしまったことに気づいた場合は、謝罪の言葉を相手に一言いうなどの心遣いが必要です。
イスラム②に続く。



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